タイトル: 建築と環境のサウンドライブラリ

   SMILE2004 (Sound Material in Living Environment)

 

 熊本大学 大学院自然科学研究科 川井敬二

 

SMILE2004とは、音に興味と関心を持っている方に役立つ音響スタディ教材づくりを主な目的として、日常生活の中で聞かれるさまざまな音や音響計測で使用される音を録音あるいは合成し、パーソナルコンピュータ上で使用できるように収録した音源データベースです。本音源データベースは日本建築学会の下で19名の研究者・実務者が参加した建築・環境音源集成ワーキンググループ(主査:岩瀬昭雄(新潟大学)、幹事:藤本一寿(九州大学)ほか3名))により作成され、2004年に書籍付きDVDとして出版されました。

ではこれからその概要について紹介します。

 

■音源集のコンセプト

収録した音源はコンパクトディスクの音質をもつデジタルファイルとして913種類で合計約2.7ギガバイトあり、1枚のDVDに収録されています。

従来から学術目的や効果音などさまざまな目的の音源集が発行されており、貴重な音源データとして活用されてきましたが、今回開発したSMILE2004は、これらに対して以下のような特長を持っています。

 

・騒音制御、建築音響という建築音環境の主要分野に加え、新たな指向としてのサウンドスケープまでを網羅する、包括的な音源集であること。

・すべての音源について、現場での収録レベルやその周波数特性などの物理的データ、および収録時の状況記述や写真といった情報が記録されていること。これを用いて実際の収録現場の音量での再生が可能となっています。

・コンサートホールをはじめ様々な空間でのインパルス応答(空間内の音の伝わり方のデータ)を収録しており、専用ソフトウェアを使用して、ある音が空間内をどのように伝わって聴取されるのかをシミュレーションできること。

・音源集の応用例として教育・実務用プレゼンテーションが提供されており、音響の専門家ではない利用者も、本音源ファイル集を有効に活用できること。

・収録した音源を加工するソフトウェアが添付されていること。


■収録音源と付属ソフトウェア

収録する音源とユーティリティソフトウェアは、すべてワーキンググループのメンバーの手で録音・合成・制作しました。

・音源のカテゴリー一覧

音源系

伝搬(インパルス応答)系

試験音

楽音

音声

交通音

機械音

生活音

固体音

サイン音

都市音

自然音

音風景

基本伝送

室内音響

屋外伝搬

音響透過

・プレゼンテーションソフト「SMILEライブラリ」

収録した音源ファイルの試聴、および応用例の提示のためのソフトウェアです。音源ファイルの検索と再生ができるとともに、収録した音源ファイルを参照しながら、大学・高専・工業高校の建築学科で授業を行うことを想定したプレゼンテーションを含んでい

ます。

 


・音源加工ソフト「SMILEエディタ」

収録した音源を加工したり現場での収録音量を再現しながら再生するためのソフトウェアです。2つの音の加算や、インパルス応答の畳み込み積分の機能を備えています。

 

■おわりに

最後に、数多くの音の集積のために、ワーキンググループメンバーや協力委員はもとより、無響室内や教会などでの楽器演奏やさまざま録音場所の提供、実際の録音作業、資料整理等には多く方々のボランティア的協力を得たことを付記しておきます。

 

[参考文献]

K. Kawai, K. Fujimoto, T. Iwase, H. Yasuoka, T. Sakuma, “Y. Hidaka, Development of a sound source database for environmental/architectural acoustics: Introduction of SMILE 2004 (Sound Material in Living Environment 2004),” Proc. International Congress on Acoustics, pp.1561-1564, Kyoto, 2004.

“DVD 建築と環境のサウンドライブラリ,” 日本建築学会編, 技報堂出版, 2004